コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

モーリス(1987年/イギリス )

NHKでイギリス映画を連発で放送してる。・・・オリンピックですか。
25年前の作品。デジタルがすごいのは、フィルム痛みが見えず、25年という歳月もまるで感じさせないところかもね。

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20世紀初頭の雰囲気になじめず、出だしから乗り遅れる。
面白くなったのは、クライブが女性と結婚したあたりから。
モーリスの選ぶ道が気になって観た。

前半の主役は文句なくヒュー・グラント演じるクライブ。
互いの関係に夢中になっているモーリスは少し幼く描写される。
他者の視線に悩み、モーリスと距離を置き始めるクライブはモーリスとは対照的だ。賢く冷静で堅実。
今のグラントが演じてる冴えない男とは、ある意味かけ離れた役。
彼はキャリアのどこで歯車を狂わせたんだろう・・・。

後半戦は、タイトルそのままにモーリスが主役。
グラントと別れて時がたち、モーリスはどこか冷めている。
グラントは世間に足並みをそろえ、女性と結婚し社会的に成功している姿を見せる。
モーリスも順調に証券会社で働いているが、自分の性癖に苦悩している。
髪型も体型も変えず、顔つきとたたずまい、雰囲気で、青年と大人の時代を演じ分けたジェームズ・ウィルビーがすごい。前半と後半で、まるで別人。

全体として、私の好きなタイプの作品ではなかったけれど、ラストは最高。
現在のクライブが窓の外を見つめ、遠き日の大学時代のモーリスが映る。
無邪気にクライブに手をふる、その姿はすでに失われた。
モーリスの笑顔が現在のものと違い過ぎて、時間が確実に流れたことを思い知らされる。
まったく違う道を選んだモーリスとクライブ。
道を外れながら、自分を変えられなかった、変えなかったモーリス。
不思議な感情が廻って、どう言葉にすればいいか思い当たらない。
思いはすれ違ったけれど、同じ思いを共有した時間が蘇る静かな感動が、このラストシーンにあった。

モーリス HDニューマスター版 [DVD]

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モーリス
1987年/イギリス
原題:Maurice
監督:ジェームズ・アイヴォリー
出演:ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイヴス、ヘレナ・ボナム=カーター(カメオ)