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コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

停電の夜に | ジュンパ・ラヒリ(新潮クレスト・ブックス)

突然、前ぶれもなく私がインドに心を奪われたのは、今年に入ってから。
理由はない。
GWを利用して、久しぶりの海外一人旅inインドを計画してたけど頓挫し、結局あきらめた。
赤レンガ倉庫で開催してたイベント「ホーリー イン 横浜」も行かなかったな。

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

作者独特の繊細な感覚で、感傷とは一線を画した人間の切なさや孤独をさらりと描いてる。
生まれた瞬間から誰しもが持っている人間特有の孤独はもちろん、アメリカという異国で生きるゆえの孤独、家族や友人、近所からの小さな共同体からはみ出されてしまう孤独についても、彼女は筆を走らせる。
しかし、深刻さとは無縁の鮮やかさが際立つ。
そして、どの話も文句なく面白く、ページをめくる手がとまらない。
ぐいぐいと引き込まれる魅力がある。
すばらしい!

この作品はもう10年も前から知っていた。
作品が発表されたと同時にアメリカで賞を総嘗めにし、日本にやって来た時も相当話題を呼んだ本作。
手に取らなかったのは、「インド系アメリカ人が書いたインド系アメリカ人を描いた短編小説」という紹介文が当時の自分に全くヒットしなかったから。インドは遠く縁もゆかりもない場所で、そこをテーマにしている作品を手に取る理由が見つからなかった。
まさか10年たって、インドつながりでこの作品を読むことになろうとは・・・。

しかし、どんな傑作・良作でも、それを受け止める側のタイミング、というものがある。
私には今がベスト・タイミング。
訳者は「三度目で最後の大陸」を推していたが、私は表題作の「停電の夜に」が一番良かった。
すれ違ってしまう夫婦の哀しみ、この感覚は国境も人種も超えて、普遍的なものだ。
10年前じゃわからなかっただろう感覚だ。
夫婦とともに、読み終わって自分も途方に暮れた。
ひさしぶりに本に飲み込まれた瞬間だった。