コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

アメリカン・コミュニティ 国家と個人が交差する場所 | 渡辺靖(新潮選書)

アメリカは不思議な国だ。超合理的な面と超保守天気な面を持つ。
私はまだ一度もアメリカに行ったことがないんだけれど、外側から眺めていると一様じゃなくて掴みどころのない国だとつくづく思う。 文化人類学者の渡辺靖氏がアメリカの9つのコミュニティを訪ね、その内部で見聞きしたことをまとめている。
著者の冷静で客観的な視点と、清潔な文章で非常に読みやすい。

取り上げられるコミュニティの性格は、思想や文化、宗教の違いなど様々。
これらの安定して閉じられたコミュニティにも当然、対立意見や衝突の歴史がある。
そして、どのコミュニティもアメリカの市場主義・資本主義とは無縁ではない。
ブルダボフの人々でさえ、経済システムとうまく付き合いながらコミュニティを維持していることは興味深い。

最後に訪れたコミュニティ、テキサス州ハンツビルの刑務所を訪れたときに、著者は刑務所を見つめるアフリカ系家族を目にする。
そのときに「大切な人たちとの時間を犠牲にしながら、自分は何をしているのか」と自省する。
このくだりはすごく人間的で、人工的に作られた9つのコミュニティとの強烈な対比を私は感じた。

文化が違う、と言ってしまえばそれまでだが、内部に幾多もの違いを抱えて、その多様性を認めている(もちろん認められていないものもあろうが)アメリカはやはり強いと思う。