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コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

祭りの場・ギヤマン ビードロ | 林京子(講談社文芸文庫)

自分にとって原爆と言えば広島が圧倒的で、長崎のイメージがほとんどないのだけれど、昔の新聞記事で何となく覚えていた名前の作家の作品を手に取って、読み始めると夢中になったのだった。

祭りの場・ギヤマン ビードロ (講談社文芸文庫)

祭りの場・ギヤマン ビードロ (講談社文芸文庫)

読んで数ページで肌寒くなるような、詳細な被爆直後を描く「祭りの場」。
原爆投下直後の匂いや温度、空気が、リアルに浮き上がってくる。 逃げる主人公(林京子)と、彼女が恐ろしいほど冷静に見つめる、周囲の人々の惨状。
読み進めながら震災の記憶が重なって、原爆投下後の「何もない」風景がどういうことか、今の自分にはわかる気がした。

同時に収録されている「ふたつの墓標」も長崎原爆を扱う。
この作者は見えるものの惨状だけでなく、人間の本来持つ残酷さも正直に書く。慈悲など偽善だと作品は言う。
読む者にも覚悟がいる。

でも、語りはとても落ち着いている。感傷的にならない、ということは重要だ。
憤りと悲しみは、言外に伝わる。