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コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

そして父になる(2013年/日本)

MM横浜で「謝罪の王様」を観ようと思ったら、まさかの満席。
仕方がないので、「そして父になる」を観た。
しっとり暗いのか、と思いきや意外とそうでもなく。今の空気を切り取ったようなドライな印象。

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福山雅治尾野真千子演じる夫婦。
夫は大手建築会社に努め、妻は専業主婦。都心の高層マンションに暮らし、乗っている車はレクサス。
リリーと真木よう子演じる夫婦は前橋で古い電気屋を営む。
家も古く、寝室は雑魚寝状態。自家用車は営業車を兼ねたワゴン。

文字に書くと、分かりやすいほどに対極にある夫婦を描いていて「ふん、つまらん」とか思うんだけど、映像になると些細なディティールも丁寧に作り込んで映し出すから、世界観に嫌味を感じなかった。むしろリアルを多いに感じた。
福山・尾野夫婦は記号をたくさん持ち過ぎていたけど、実家の描写のお蔭で現実から浮遊することなく見事着地している印象。
さすがだな!と思ったのは真木よう子のファッション。
謎のレイヤーファッションを身に着けて、リアルな地方の20代後半の母親像を体現してた。すごい。
あのファッションセレクトはホント地方そのもの。
真木よう子の母親像も良かった。子だくさんなので分け隔てなく愛情を注ぎ、かつ病院側に金を求めるガサツさもあって。

この作品は、子どもがいるか、いないかで受け取り方は違う思った。
自分にはこどもがいないから、親目線では到底観られず、子ども目線で観てしまった。
これまで過ごした時間ではなく血を選んだ親たちに驚愕し、取換えられた子どもたちの心境を考えると切なくて仕方なかった。
子どもは子どもであるが、状況を理解できないほどバカではないのだ。
必死に状況に適応しようとする姿を観ていると、息苦しかった。

子どもがいたとしたら、もちろん親目線で観ただろうし、自分の思いと映画の中の親たちが違うセレクトをしたとしても、子どもたちとの関係を軸に映画を観るのではないかな。自分だったら子どもたちとどう接するかとか、きっと今回とまた違う目線で観る。
劇場は意外にも老若男女バランスよく観客がいて、四方からすすり声が聞こえてきた。
それぞれが、それぞれの場面で登場人物たちにリンクしたのだろうか。

子ども取り違えの裁判の中、取り違えが故意だったことがわかる。
恐ろしい話だけれど、他人の家族の幸福を妬んだことが引き金だった。
他人から見える幸せと、自分が見てる幸せは違う。
映画が幾重にも重なる家族の姿を映し出す中、家族は成るモノなのか、作るのモノなのか自分も考えた。
観てる側にも沢山の思いが廻る、一本だった。

そして父になる
2013年/日本
監督:是枝裕和
出演:福山雅治尾野真千子真木よう子リリー・フランキー