コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

別離(2011年/イラン)

Bunkamuraで上映されてたときから気になってた一本。
久しぶりに2時間集中力が切れず、画面にくぎ付けになって観た。

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2時間、まったく緊張感が途切れない。
それぞれがそれぞれの立場での事情を抱えているため、引くに引けない。
見えない綱引きのバランスが、静かに崩れ始めてからは、二つの家族が一体どこに転がっていくのか気になって、のめり込むように観てしまった。

イスラムの教えに厳格なイランでは、女性は親族以外の男性に触れられない、ということに驚いた。
このことがきっかけとなり、二つの家族に大きな波乱を引き寄せる。

流産したラジエーは辛い。しかし、殺人罪で訴えられたナデルにも自分は同情した。
全く違う立場の二人だけれど、お互い弱音を吐く場所がないのがしんどい。
ラジエーの旦那は職がなく、ナデルは離婚調停中。
互いに自分がしっかりせねばという意識もあるだろう、それぞれの伴侶に、二人は甘えられない。

特にナデルはアルツハイマー病の祖父の介護をしながら、一人娘と二人きりの生活となり、家事全般も請け負うことになった。
慣れないことを必死にしようとした最中に起きた事件で、中盤ヒステリックに自分の正当性を主張する彼の姿は痛々しいが、しかし彼の気持ちもわかる気がするのだ。

イランではまともな教育が受けられないと国外に出ることを希望しているナデルの妻、シミン。
彼女の心は終盤まで変わらず、離婚は決定的となった。
親権は娘の意志に任される。娘のテルメーは父を選ぶのか、母を選ぶのか。
選択の結果は、映画の最後まで示されない。うまい。

別離
2011年/イラン
原題:جدایی نادر از سیمین
監督:アスガル・ファルハーディー
出演:レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハーディー