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コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

明日泣く | 色川武大(講談社文庫)

全体的に切なさと一緒に爽やかな明るさがあって、ああ昭和だなと思う。
昭和の終わりころのバブル崩壊前後の小説やドラマとかって、妙な明るさがあっていいなとよく思う。 追い込まれたひっ迫感がない。完全終了の残酷さもない。

明日泣く (講談社文庫)

明日泣く (講談社文庫)

将棋棋士芹沢博文を書いた「男の花道」と、かつての悪友二人の行く末を書いた「男の旅路」がよかった。

特に棋士芹沢博文という人は完全に針が振り切れてしまった人のようで、「男の花道」に出てくるエピソードもなかなかだったが、wikiに載っているエピソードもすごい。 ブレーキを持たずにスピード違反でかっ飛ばして生きているような人生。こういう人間を最近見なくなった。
彼の半ば破たんしたような人格を、周りの人間が支えていた。色川武大もいくばくかの思いを抱えながら、彼のそばにいた一人なのだろう。芹沢に対する優しい目線にぐっと胸を打たれる。

芹さんは、棋士、特に名人というものを、無上のものと思っている。世間はもちろん、芹さんほど将棋さしに思いを寄せていない。その現実にぶつかるたびに、彼は荒れる。勝てぬと知っていて、意地を張る。芹さんの内心の中では、ドン・キホーテのように、名人位というものの威光を、一人で世間に対抗して戦っている図柄があったかもしれない。

色川武大は読まねば、と思いながら漠々と時間ばかりがたってしまった。
この人の文章は都会的というか、湿っ気なく切なさもさらっと書いて、後に残さない。カッコよさが文章からにじみ出てて、もっと読んでみたくなった。