コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

テロル | ヤスミナ・カドラ(ハヤカワepiブック・プラネット)

主人公はアラブ系イスラエル人アーミン。職業は外科医。
美しい妻と共に不自由ない生活を送るが、ある日テルアビブで起きた自爆テロ事件で人生が一変する。

テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)

テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)

自爆テロ」という単語にも、初めてその単語を聞いたころの衝撃はだいぶ薄れて、もう慣れてしまった。
小説の序盤、自爆テロを「カミカゼ」と表現するくだりが出てくる。
日本も系統は違えど似たようなことをしていた過去があったんだっけ。

テロが頻発する街に生きて、まさか当事者になってしまったことへの衝撃。
テロがあっという間に壊してしまった普通の日々への追憶。
テロを仕掛けた張本人という、自分の妻が知らない他人になってしまった哀しみ。
イスラエル人の友人たちが手をさしのべようとしても、アーミンは頑なにしなやかに拒む。

事件を事実として伝える、テレビのニュースや新聞とは違って、小説にはそこにいる人の息遣いが伝わる説得力がある。
何が起きているのか、起きたのか、ごり押しで伝えてくる迫力がある。

アーミンは事件の真相を探るため、テルアビブからエルサレムベツレヘム、そして最後にはジェニンへ向かう。
ジェニンの虐殺は、もう9年も前のこと。
アーミンが思いをはせる、かつての平和なジェニンの風景には胸がつまる。

救いがあるわけじゃない。
でも、読んでおきたい一冊。

地獄のような日常に、いつか光がさすといいな。
和平交渉が、一刻も早く進んでくれることを願う。


テルアビブは海辺の街。
調べてみると、イスラエル最大の都市。素晴らしい都会。
壁の向こう側、パレスチナとの落差に愕然とする思いよ。