コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

舞踏会へ向かう三人の農夫 | リチャードパワーズ(みすず書房)

人生初の1ページ二段組み小説。でもフォントは意外に大きい。
…どうして上下巻にできなかったんだろう。でも一冊にまとめたほうが経済的か。

舞踏会へ向かう三人の農夫

舞踏会へ向かう三人の農夫

不思議な小説だった。
題材としてはすごく面白い。でも文学としての面白さはどうだったのかな。
正直なことをいうと割と読みづらい作品で、読み終えるのにだいぶ時間がかかった。読みづらさは文の運び方が、たぶん私の趣味と合わないだけだと思う。

作品は、作者のびっくりするほど幅の広い知識を溢れんばかりに総動員させて、20世紀のいろんなエピソードをつなぎ合わせて物語が組み立てられてゆく。
始まりはかつての栄光を取り戻せないデトロイト。20世紀の主役のひとつ、自動車産業が興された街。
デトロイトの美術館に飾られている写真から、自動車王フォードを経て、現代へ続く歴史が連続する。
この小説に書かれた1984年は、アメリカの自動車産業に影が落ちていた時代だった。
確かに、20世紀は写真と自動車の世紀だった。2度にわたる、大きな戦争の世紀だった。

壮大な作品であるけれど、この作品で私の胸を一番打ったのは、ほんの小さな言葉。メイズの母親が、あまりに早く実家を発つ息子に言った言葉だった。

ねぇペーチェト、もう少し泊まっていきなよ。トランプでもしようよ。

母親は、いつの時代も不変だ。