招かれざる客(1967年/アメリカ)
キング牧師の「I have a dream」の演説は1963年のこと。
この作品が1967年に制作されたことに、ただ驚くばかり。
黒人のジョンと白人のジョーイ。二人を乗せたタクシーの運転手の顔を見れば、事の成り行きは冒頭から明白だ。
突進型のジョーイが台風を巻き起こしていく中で、ジョンとジョーイの両親はどうなるのか。そして、後半はジョンの両親も参戦する。
二人の結婚に賛成する者、反対する者。
ジョーイをリベラルに育てた新聞社勤めだった父親は、頭ではジョンを認めながら、気持ちが納得できない。
ジョーイの母は戸惑いながらも、娘の選択を理解しようと努める。
そしてジョーイの家に勤める家政婦は黒人の女性だが、彼女はジョンを信用していない。
偏見は人種間に限らない。生きている立場の違いによっても、偏見はいくらでも生まれる。
人種間の溝は、今もあるが、この時代は今もよりももっと深く、近寄りがたい大きな溝だったはず。
そこに足を踏み入れて、きちんと娯楽作として作り上げたことが素晴らしい。
ジョンが劇中でいう。
ジョーイは子供を全員大統領にすると。
<中略>
でも、それは出来過ぎです。
せめて国務長官でしょう。
これはジョーイの父へ向けたジョーク。
でも今や、アフリカ系黒人の血をひくオバマが大統領になったんだよ。
映画の中に入って行って、ジョンに伝えたい。
冒頭とエンディングに流れる歌の歌詞は「これは物語」。暗示させる歌詞がにくい。
ただ、気になることは一点。
黒人のジョンが高学歴であり、世界的に著名な人物であること。
彼は、普通の人間ではなかった。
賞賛に値する人物であり、例えば彼が市井の人であったなら、この物語はどう転換されていたのか。
そこを考えると暗澹たる気分にもなるが、時代背景を考えれば致し方ない。
当時の白人が好む黒人像を、この作品から窺い知ることができる。
賞をとったのは、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーンだったようだけど、ジョンを演じたシドニー・ポワティエも名演。落ち着いた知性的な演技で惹きつける。
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招かれざる客
1967年/アメリカ
原題:Guess Who's Coming to Dinner
監督:スタンリー・クレイマー
出演:スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ