ホテル・ルワンダ(2004年/南アフリカ・イギリス・イタリア)
奇跡の20年、と言われるほどに急速な発展を遂げつつあるというルワンダ。
「ルワンダ=内戦」の図式しかなかったのに、「えええ!」と驚いてしまう。
ルワンダといえば…と思い出して、手に取った本作。
公開当時は扱う内容の深刻さに立ち向かえない気がして敬遠してたんだけど、観て良かった。すごく良かった。
映画の冒頭から、すでに民族対立のマグマが沸き立っている状態。
些細なきっかけで風船が弾けてしまいそうな、すさまじい緊張感が画面全体にただよう。怖い。
主人公のポールはフツ族だけど、妻のタチアナはツチ族だし、ポールのホテルの職場もフツ族とツチ族が一緒に働いている。
共存していたはずの人たちが、一部の強硬な人たちに煽られる形で一夜にして殺す側と殺される側に二分される。
タチアナを含めたツチ族の人たちは逃げても逃げても追い詰められていく。
「ツチ族である」という理由で、フツ族がとてつもない勢いでツチ族を根絶やしにしようとする、その憎しみはどこから来るのか。 映画の中では一瞬一瞬が命がけで、観ている自分も生きた心地がしなかった。息がつまって口の中がカラカラになる。 この恐ろしさは言葉にできない。 映画として観ている自分だって信じられない思いなんだから、当事者の人たちにとってはどれほどの地獄だったか、想像を絶する。
ただ、この作品を遠い異国の物語と捉えてしまうと、本質を見失う。
ポールという、フツ族でありながら穏健派であり、起きていることの異常さに自覚的だった男を主人公に据えたのは、この内戦を悲劇ではなく、人災だと伝えたかったからじゃないのか、と思う。
ほとぼりはすぐに冷めると思っていたポールの読みは甘すぎたが、それが普通の人間の感覚。
普通過ぎた彼には、この惨劇を想像することができなかった。
ルワンダの苦い歴史を描きつつ、気が付かぬうちに、地獄が近づいてきた恐ろしさや、扇動され狂気に駆られる人間の弱さも映し出している。必見。
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最後の歌も良かった。
ホテル・ルワンダ
2004年/南アフリカ・イギリス・イタリア
原題:Hotel Rwanda
監督:テリー・ジョージ
出演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ジャン・レノ