かもめ食堂 | 群ようこ(幻冬舎文庫)
映画作品の「かもめ食堂」は、公開当時に恵比寿ガーデンシネマまで観に行った。
当時、私23歳。社会人としてスタートを切ったばかり。
映画を観終えると悶々としてしまい、すぐに家に帰った記憶がある。
中年女性が異国で浮遊している姿に実はほとんど共感できず、むしろこの話がファンタジーとして成立してしまう事実にえもいわれぬ異様さを感じたのだった。
どうして日本にいられなかったのか。それが気になって仕方なかった。
作品がヒットしたことも含めて、妙齢の女にとって日本は生きづらいのかな、と将来が少し不安になったりもした。
映画はあれ以来観返してないけど、思うところあって小説を今更ながら手に取る。
私も30代にはいり、あの頃よりはこの作品を理解できるような気がして。

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読んで初めにビックリしたのは、映画ではゴソッとそぎ落とされていた3人の背景が描かれていたこと。
サチエがまさか宝くじに当たっていたとは…。
ほかの二人も遺産やら何やらでお金には特に不自由していなかった様子。なるほど…。
ストーリーはほぼ映画の通り。(というか小説が先にあったので、映画が原作に忠実だったといえる)
私は作者や登場人物たちと同世代ではないのでばっさり言ってしまうけど、ある意味「かもめ食堂」は夢物語。おとぎ話。
異国にいるからこそ、日常のいろんな負の部分がきれいに切り取られて、いわばクリーンな無添加な状態となり得た中年女性たちのお話。
色々やさぐれてしまった自分にはやはり物足りず、今回も「ふーん」で感想は終えてしまいそう。
許容できるか否かは年齢の問題ではなかった。生きているスタンスの問題だと思った。
こういう生き方もあると思えたけれど、私は羨ましくはなかった。
そして余談。
群ようこの本業はエッセイストだけあって、残念ながら小説の筋力が弱い。
セリフ間の状況・風景の描写がまるで皆無。絵のない絵本を読んでいるよう。
映画の場面を思い浮かべながら小説を読んでシーンを想像する、という補完をしないと読み進められない作品だった。
映画はこちら。映画は大人気だったよねー。
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