コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

こうばしい日々 | 江國香織(新潮文庫)

本当に久しぶりにこの本を手に取った。再読するのは多分6、7年ぶりくらい。三度目。

こうばしい日々 (新潮文庫)

こうばしい日々 (新潮文庫)


初めて読んだ高校生の頃は、あまりの瑞々しさに感動した覚えがあるんだけど、久しぶりに読んだ今回の感想は「?」。

この本には「こうばしい日々」と「綿菓子」という二編の短編が収録されてるけれど、何度読んでも面白いと思うのは「こうばしい日々」の方。ちょっとドライな大介がいい。
「綿菓子」の方は、主人公みのりのテンションに少しついていけない自分と、ラストの次郎くんに完全にドン引いてしまった自分がいて、今の私には「勘弁」て感じだった。昔はもう少しトキメキを持って読んでた気がするけれど、私は完全に大人になってしまった。
でも実はリアルに描けてるのはみのりの方で、大介は大人の書いた大人が好きそうな男の子って感じもする。みのりをあまり好きになれない私は、もう中学生のメンタルには戻れない。

それぞれの話に、主人公に冷や水を浴びせる人物がいる。「こうばしい日々」には担任のミズ・カークブライド。「綿菓子」には同級生のみほ。この二人が少し熱くなった物語のテンションを鎮めてくれる。
ミズ・カークブライドが言い放った次の言葉がいい。

一つのことを、はじめから知っている人もいるし、途中で気がつく人もいる。最後までわからない人もいるのよ。
タイミングって、とても個人的なものなの。

他人と理解し合えないのは、タイミングの問題。そのタイミングが永遠に訪れない人もいる。そうしたら、それは仕方のないことだ、と言外に言い切ったミズ・カークブライドの格好良さだけは何度読んでも変わらない。

余談だけど、江國香織って意外とその時の流行りものとかを作品の中に入れてくる人だと思うんだけど、「綿菓子」の中に出てきたのは「タスマニア物語」と「東映まんがまつり」。
東映まんがまつり」は私も馴染みがあって超懐かしいけど、「タスマニア物語」になると存在しか知らない。古い…古すぎる…。調べてみたら90年の邦画で、私そのとき7歳とか8歳だもの、記憶にないはずだよ。Wikiで調べてみたら、作品の内容に関した記述が薄い代わりに以下の文面が。ひどい…。

急ごしらえの企画の映画を成功させるべく、フジテレビの総力を挙げての怒涛の宣伝活動が行われた。タスマニアの美しい自然、動物の可愛さ、ダジャレなど、考えられる限りの演出を駆使したCMやテレビ番組が大量に放映され、良好な興行成績を残した。

タスマニア物語 - Wikipedia


タスマニア物語、たぶん観ることはないだろうな。

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