コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

楽園のカンヴァス | 原田マハ(新潮社)

面白い小説ってはじめの数ページでわかるもんで、この小説ももう最初から面白い予感がひしひしとあって、時間を見つけて一気に読んだ。

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス


確かに評判通り、面白かった。でも、最後まで読み終えてしまうと、何だろうこの物足りない感じ。
スピード感があって一気に読ませる語り口は大好きだけど、この話、実は色々足りてないよね…?アート・ミステリーと銘打たれてるけど、実際そこまでミステリー色は無く、私は鑑定バトルの方に燃えたんだけど、そちらも不完全燃焼だった。

織絵のバックにはキーツがいて、さらにオーウェンも絡んでいるのであれば、そこのドロドロが見たかった。いわば、テート・ギャラリー VS MOMAの代理戦争を呈しているんだから、キーツとトムがもっと絡んでも良かった。バーゼルに現れたトム・ブラウンが、鑑定バトルの件を知らずにただ素通りしただけなのはいただけない。色んな人間が暗躍してる中でひとりオアフでのんびりバカンスしてたなんて、あまりにも間抜け。そして、鑑定バトルのラスト、真作と贋作を見分けた根拠をもっと詳しく知りたかった。もっともらしい、科学的&技術的な視点も語ってほしかった。最終的に織絵は自らの意志でアートの世界から身を引いたけど、ティムは何のお咎めもナシでMOMAに勤務し続けるってあり得るんだろうか…。あれだけ脅したマニングは何もトムにリークしなかったの?

最終的にね、色々落ちてるパズルのピースがね、合いそうで合わないのよ。想像でどうにかなる話じゃないのよ、これ。文句言いたいわけじゃない。この小説面白かったの、久しぶりにかぶりつきで読んだの。だから勿体ないな…って。でも作者のルソーへの大きな愛は伝わる、読者にも伝染する。ルソーの絵、それこそMOMAの「夢」を人生でいつか一度、この目で直に見てみたいなって、この小説を読んで思った。

読みながら、ルソーやピカソの絵がずーっと気になってて、読み終わると彼らの絵をネットですぐに画像検索した。きっとこの本を読んだ人は、みんなそうだと思う。
という訳で、この本のお供にはこれを。

久しぶりに美術館に行きたくなった。岡山県大原美術館、行ったことないけど、いつか訪れてみたい。