扉をたたく人(2008年/アメリカ)
ポスターやDVDパッケージに映っているのは、地下鉄でジャンベをたたく初老の男。
「扉をたたく人」という邦題と、このジャケット写真で、まさか不法移民をテーマにした作品だなんて誰が思う。
9.11後に厳しくなったアメリカの移民規制。
とくにイスラム圏出身者へ向けられた国家の眼が厳しくなった社会を映す。
小品だが、良い作品。おすすめ。
ウォルターがタレクを救うべく奔走する姿に、素直に感動した。
自分の生活を半ば捨てていたような男が、数日前に出会ったばかりのタレクとゼグナブのために、そしてタレクの母親モーナのために必死になる。
扉をたたく、とはつまりウォルターの人生の扉をたたいた、という意味と自分はとらえた。
しかし、ウォルターとタレクやゼグナブ、モーナの間には実は深い溝がある。
非移民者と移民者の溝だ。
ウォルターは非移民(数世代前は確実に移民だが)であり、観ている自分もそう。
タレクが捕まったと聞いた瞬間のゼグナブとモーナの絶望を、ウォルターは正確には理解できていなかったと思う。
自分も作品の終盤まで、罪もなく捕まったタレクは帰ってくると思っていた。
ゼグナブとモーナは、結末もすでに見通していたに違いない。
この作品が公開されたのは2008年。
2013年の今、シリアは内戦真っ只中。
タレクの母国がシリアと聞いて、さらに絶望する。
アメリカ映画は、9.11後の傷ついた自分たちをテーマにした作品が多かった。
この作品は国内の他者へ視点を向けた点が比較的珍しい。
その意味でも観る価値あり。
タレクの母を演じたヒアム・アッバスは「猫が行方不明」にも出演してるって!?
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2009/11/20
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扉をたたく人
2008年/アメリカ
原題:The Visitor
監督:トム・マッカーシー
出演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス