コーヒー3杯

紙の日記が苦手だから。

吉本ばなな自選選集3 Death | 吉本ばなな(新潮社)

図書館から借りてきて読んだんだけど、この本は日本の自宅にある本じゃないかなって読んでる途中で思った。
家にある本かどうかもわからなくなるくらい、久しぶりに手に取ったし、読んだ本だった。

吉本ばなな自選選集〈3〉Deathデス

吉本ばなな自選選集〈3〉Deathデス

たぶん一番初めに読んだのは大学の頃だったと思うんだけど、あの頃と少し違うのは「キッチン」「満月-キッチン2」が静かに沁みこむように、私の中に入ってきたこと。
昔は吉本ばななの何となくマンガ臭い設定とか展開が苦手で読んでてもすぐに放り出すような有様だったんだけど、この二作品に共通する淋しさとか優しさがやっと理解できるようになった。私も大人になったのかな。
でも、この作品を若くして書いた吉本ばななに改めて驚きもした。

二人の気持ちは死に囲まれた闇の中で、ゆるやかなカーブをぴったり寄り添ってまわっているところだった。しかし、ここを越したら別々の道に別れはじめてじまう。今、ここを過ぎてしまえば、二人は今度こそ永遠のフレンドになる。

「満月-キッチン2」の中の、ひとり伊豆でかつ丼を食べるみかげが、ふと雄一に電話足した後のこのモノローグこの一節だけとっても、私は身動きが取れなくなるくらい、しびれてしまった。恋愛上のこの微妙なタイミングを的確な言葉で書きつけた吉本ばななに参ったって思ってしまった。

同時収録されてる「N.P.」に関してはそんなに感動もしなかったんだけど、昔読んだ時と同じ部分に思うところがあって、相変わらずはっとしたり。

「嫌なら離婚しない結婚をしなさい。」
父は言った。私は時々思うのだ。目に見えないハンデについて。精神病の家系、離婚を繰り返す親の子供。そんなゆがみのようなことについて。