嵐が丘 | エミリー・ブロンテ(新潮文庫)
「高慢と偏見」を読んでから私の中で古典に対する敷居が低くなったこともあり、長年読まねば読まねばと思いながら後回しにし続けてきた「嵐が丘」をやっと手に取った。我ながらいいタイミングだったと思う。結果として、私のこの作品に対する印象はあまり良くはないんだけど、「高慢と偏見」の後だったから私のこの印象が時代のせいじゃなくて、単純に作品との相性のせいだって思える。

- 作者: エミリー・ブロンテ,鴻巣友季子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/06
- メディア: ペーパーバック
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実は私の中ではもう10年も前に先に読んでいる、この作品を下敷きに書かれた水村美苗の「本格小説」があるので、読みながら無条件にヒースクリフトとキャサリンが東太郎とよう子ちゃんに変換されてしまって、純粋な形ではこの作品を読めていないと思う。ヒースクリフトの異常なまでな執着の強さと凶悪さ、頑なさを、東太郎と比べてしまって、私の中でなかなか受け入れられず、読みながらつっかかってしまって仕方なかった。キャサリンも同様で、キャサリンのどっちつかずのわがままさ、気まぐれさ、キツさ、がよう子ちゃんよりだいぶ強い形で書かれているので、ちょっと私と小説の間の距離を縮めることが難しかった。印象があまり良くないのは、多分そのせいだと思う。
でも、最後に光が差して心底ほっとした。この一族たちは本当にどうなっていくのかと読みながら鬱々としたけれど、「本格小説」とは違うラストを迎えて、私の中では納得できた。よかった。
この作品を20代で書き上げたエミリー・ブロンテは凄い。憎しみの連鎖が続いていく物語を書きあげた彼女の創作の孤独を考えると、正直私はヒースクリフと以上の凄まじさを彼女に感じる。